検診の便潜血で発見された大腸癌の治療

~腹腔鏡下大腸切除術について~

大腸癌の発見には便潜血検査が有用です。当院では全大腸がん手術例の30%~40%に腹腔鏡を用いた手術を行っています。

外科 角谷直孝(副院長、外科部長)

症状の無い大腸癌の発見には便潜血検査が有用です。検診の便潜血でチェックされ大腸内視鏡検査の結果、大腸癌と診断された場合には第一に内視鏡的粘膜切除(EMR)が可能か評価します。癌の深さが粘膜内にとどまっている場合にはEMRが可能です。粘膜下層以下に癌が及んでいると診断された場合には外科手術を考慮します。これらの診断は当院の消化器内科で行っている拡大内視鏡や超音波内視鏡の所見で判断します。癌の深さが粘膜下層にとどまっている場合には腹腔鏡下手術が良い適応となります。また、癌の深さが筋層より深い場合でも隣接臓器への癌の広がりがなく、腸閉塞を合併していなければほとんどの症例で腹腔鏡下手術が可能です。当科では全大腸がん手術例の30~40%に腹腔鏡を用いた手術を行っています。

腹腔鏡を用いた手術のイメージ
腹腔鏡を用いた手術のイメージ

腹腔鏡を用いた手術では通常4か所に5ミリの穴をあけて、この部位から手術鉗子を入れて手術を行います。この穴の痕は残りません。最後に4センチの創部から腸の吻合と癌標本の摘出を行います。傷痕として残るのはこの創部のみです。

検診の便潜血で発見された早期の結腸癌症例
検診の便潜血で発見された早期の結腸癌症例2
検診の便潜血で発見された早期の結腸癌症例

写真は横行結腸の早期癌に対し腹腔鏡下手術を行った方の術後退院時の創部の写真と摘出標本です。腹腔鏡下手術では開腹手術と同等の腸管切除とリンパ節廓清が可能です。

開腹手術と腹腔鏡下手術の創の違い
開腹手術と腹腔鏡下手術の創の違い